【留学編/セルト】保護者の受難
「!早く起きないと遅刻するぞ」
「…え?うわ、もうこんな時間!?」
「ただいま〜」
「お帰り、遅かったな。暗くなる前に帰れって言っただろ」
「ごめん、写真撮りに行ってたんだ」
「あ〜お腹すいた。セルト、晩ご飯まだ?」
「ああ、すぐできるから座ってろ。……ほら」
「わあ、おいしそう!」
「、これ。部屋に持っていけ」
「?なに?……毛布?」
「今夜は冷え込むって言ってたから。温かくして寝ろよ」
「うん、ありがとう!」
****
「セルトってさ、お母さんみたいだよね」
「…はあ?」
バールのカウンターに肘をついて、出し抜けにそう呟いた下宿人の言葉に、
セルトは思わず怪訝な顔を向けた。
「いつも私の面倒見てくれるし、なんだかんだ言って優しいし!」
ちょっと口うるさいところとか、うちのお母さんにそっくり!!
などと、淹れてやったミルクティーを片手に、にこにこと弾んだ声で言う。
褒めているつもりなのか、それともケンカを売っているのか。
どちらにしても、本人を前にして言うセリフではない。
「馬鹿なこと言ってないで、もう寝ろよ。…遅いぞ」
「は〜い。おやすみ、お母さん♪」
「お母さんって言うな!……おやすみ」
どこか上機嫌で二階の自室に戻っていくを、セルトはどこか虚ろな目で見送る。
…こっちは明るい日溜りのような彼女を、いつも特別な想いで見ているというのに。
想いに気付くどころか、まるで男として意識されてないじゃないか。
「せめてお兄さんか、お父さんにしろよ……はぁ」
そうひとりごちて、セルトは疲れたようにがっくりと項垂れた。
彼女と入れ違いに、階段を下りてくる音がする。
「ねえ母さん、僕のパンツどこ?」
「!!あ、兄貴まで………パンツくらい自分で探せ!!」
「ふふ、は〜い」
本家の投稿SS集に投下したやつ・その2。
当時感想を下さった方、本当にありがとうございました^^
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