【留学編/ケスタロージャ】日だまりと日陰




仕事で外出する用ができて、街中を一人で歩いていた時のことだった。
さまざまな商店の並ぶ通りを足早に歩いていると、
向かい側の通りに建つ文具店から、見慣れた人影が出てくるのが見えた。

明るい長い髪、まだあどけなさの残る可愛らしい顔立ち、学生服からすらりと伸びた手足――

…あの人だ。
瞬間、自然と胸の鼓動が早くなる。最近はいつもこうだった。
彼女のことを想うだけで気持ちが浮き足立って、滑稽なほどに舞い上がってしまう。
信じ難いことだが、私は彼女に「恋」をしてしまっていた。

さ…、……!」

反射的に声をかけようとして、近づきかけた足が不意に凍りつく。
彼女が出てきた店のドアから、続いて若い男が出てきたのだ。
見た目から察するに、おそらく彼女と同じシエナ校に通う学生だろう、
両手いっぱいに重そうな荷物を抱えていた。

彼女が口を開くのが見える――

「重いでしょ、私も持つよ」
「いいよ、これくらい。一人で持てるよ」
「そう…?すごいね、力持ちなんだね」

――感心したように言う彼女に、少し顔を赤らめて、はにかんだように笑う少年。
その手の話に疎い私でさえ、一目で「彼女に気があるのだ」と分かった。


それから二言三言、何か言葉を交わすと、彼らは連れ立って歩き始めた。
その先には、彼らの通うシエナ校がある。
学校で必要なものを、買い出しに来ていたのだろうか…
……二人きりで。

無意識のうちに、私は彼らに気づかれないように、そっと後を追っていた。


少年は、重い荷物を辛そうに抱えながら、それでも彼女には気取られないよう努力しながら、
しきりに彼女に何か話しかけていた。
素直な彼女は、彼の話に律儀に相槌を打ち、ときおり楽しそうに笑い声を上げたりしている。
私以外の者に向けられる彼女の笑顔に、胸が締め付けられる思いがした。
しだいに身体が石のように重くなって、彼らを追う足が止まる。


私は、あんな風に彼女を楽しませる術を知らない。

私が想いを寄せるあの人は、まるで、春の日だまりのような女性。
誰に対しても明るい笑顔を振りまいて、人の心に花を咲かせる。
温度のない、冬の日陰のような陰気な場所で蹲っていた私には……眩しすぎる。

最初から分かっていた。
彼女の隣に立つべきなのは、あの少年のような、暖かい場所の似合う人間なんだ。


居たたまれなくなって、私は踵を返した。
彼らに背を向けて、歩き出す。
日の当たらない場所に逃げ込むように。






主人公ちゃんに絶賛片思い中の、弁護士の独白風SS。
暗い、暗いよケスタロージャさん…!でも大好き!!
自らの不幸な生い立ちゆえに、一歩を踏み出すことができない彼に、常時不憫萌えしています。
でもさすがにこのままだと不憫すぎるので、めでたく両思いになる続編も書きたいです〜。

あと、ゲーム本編で、掌くんと一緒に買い出しに行くイベントがありますが、
↑に登場する少年は掌くんではなく、ただのオリジ同級生です。
掌くんはこんな露骨に主人公ちゃんの気を引いたりしそうにないので…(^^A



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